敷金返還請求

転勤のために、賃貸マンションを引っ越すことになりました。
入居の際に礼金と別に敷金4か月分の56万円を支払いましたが、契約のときにそのうちの2か月分は返金されないと説明されていました。

自分ではきれいに使用していたつもりだったので、残り2か月分は返金になるものと当てにしていたのですが、23万円以上がリフォーム代にあてら得るといわれました。

見積もりを見せてもらいましたが、クロスの張替えなどがあります。
私たちは夫婦2人暮らしで、ともにタバコは吸いません。56万円も敷金を払い、家賃の延滞もなかったにもかかわらず、5万円しか帰ってこないものなのでしょうか。  (40代  男性)

敷金とは、賃借人の賃料の滞納や、不注意による賃借物に対する損傷・破損等に対する費用を担保するために、賃借人から賃貸人に預け入れるものです。
賃貸人は、賃料の滞納や賃借人の不注意等による損害を受けたとき、賃借人からすぐに費用を支払ってもらえるとは限らないことから、その担保としてあらかじめ預るのが敷金です。

ですから、賃借物の明渡しに際して、賃借人が賃貸人に対して家賃の滞納など、何の債務も生じさせていなければ、全額返金されることになります。賃借人の故意や不注意、通常でない使用方法等により、賃借物に損傷・汚損を生じさせているときに、その損害額を差し引いた残額を返還されることになります。

標準的な契約書では、退去時の原状回復を義務付けていますが、原状回復とは入居前の新品の状態にすることではなく、賃借人の居住、使用により発生した建物価値の減少のうち、賃借人の故意・過失、善管注意義務違反、その他通常の使用を超えるような仕様による損耗・既存を復旧すること、とされています。

つまり、通常の生活において損耗・磨耗した部分については、すでに家賃に含まれていると考えられますので、畳をこがしたとか、フローリングを回復できないほど傷つけたなどの場合でなければ、賃借人が修繕費を出す必要はないわけです。

敷金返還については長い間の慣習等のため、貸すほうと借りるほうに共通の認識がなくトラブルになりやすいため、国土交通省では「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」のなかで、住居の各部分ごと、経過年数、損傷の具合などにより、その回復費用が賃借人によるのか、賃貸人によるのかを定義しています。

ご相談の場合もクロスの張替えなどは、通常の生活で使用した磨耗などまで回復義務はなく、物件そのものもアップグレードに該当し、それを賃借人が負担することは、原状回復以上の利益を大家に与えることになりますので、家賃の滞納などがなければ、敷金の全額返還を請求することができます。

また、クリーニング費用が敷金から差し引かれることもよく見受けられますが、ガイドラインでは、賃借人は明け渡しの際に通常の清掃をしてあればそれでよく、業者を依頼してのクリーニングも、物件のアップグレードに相当するとされていますので、大家負担となります。

契約時に「退去時にリフォーム代金を敷金から差し引く」という特約があったとしても、賃借人に特別の負担を貸す特約の要件として、
@特約の必要性があり、かつ、暴利的でないなどの客観的、合理的理由が存在すること
A賃借人が特約によって通常の原状回復義務を超えた修繕等の義務を負うことについて認識していること
B賃借人が特約による義務負担の意思表示をしていること
が必要となりますので、その要件を満たしていなければ、消費者契約法により無効となります。

したがって、仮に原状回復についての特約をもうける場合は、その旨を明確に契約書面に定めた上で、賃借人の十分な認識と了解を得て契約することが必要です。

ただし関西方面では保証金(敷引)の定めがあり、家賃の3ヶ月から4か月分を契約時に預け退去時には返還されない、という慣習があります。そのかわり、月々の家賃を低額に抑えるなどの合理的な要件が必要となりますので、家賃の割りに納得のいかない保証金であれば、必ず確認してください。

契約書を読んで署名捺印してあるのだから、という大家側の言い分もあるとは思いますが、賃借人の方が法的に弱者とみなされ、署名捺印してあることが必ずしも納得したということにはなりません。
敷金が返還されない場合、または、返還金額が不当である場合は、まず、内容証明で返還を請求してください。

それで応じないようでしたら、ためらわず少額訴訟を提訴してください。
原告の訴えが100%聞き入れられるわけではありませんが、最近では賃貸人側に何らかの返還命令が出るのがほとんどのようです。

もどってくればかなり助かるお金ですので、泣き寝入りせずに取り戻しましょう!!